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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)10140号 判決

被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否か判断する。

1 右当事者に争いのない本件発明の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載及び成立に争いのない甲第一号証(本件特許公報)によれば、本件発明の構成要件は次のとおりであると認められる。

(A) 表示幕の各表示部分に各一個ずつ取付けた位置検出素子と、この位置検出素子を検出する単一の近接スイツチと、この近接スイツチの出力パルスを計数する計数器を具えること

(B) 右計数器の各計数出力に接続され駆動用モータの正転、逆転、停止信号を発生する論理制御回路を具えること

(C) 右正転逆転信号によりモータを正転及び逆転せしめるモータ制御回路を具えること

(D) 前記論理制御回路の停止信号によりモータを停止せしめ同時に装置の電源を開放せしめる停止制御回路を具えること

(E) 前記論理制御回路のロータリスイツチの任意の整定によりその整定値に相当する表示幕の表示部分を速やかに表示するようにしたこと

(F) 右を特徴とする行先表示装置

2 対比

(一) 被告装置であること当事者間に争いのない別紙物件目録の記載によれば、被告装置は、本件発明の構成要件(A)に対応する構成として、表示幕(1)の各表示部分に各一個ずつの窓孔(H)を明け、作動桿(NS´)が表示幕面に接触しているときと右窓孔(H)に合うときに各別の電気作動をするマイクロスイツチ(MS)を設けると共にこのマイクロスイツチ(MS)の電路はリレーボツクス(10)内のトランジスタ(Tr)からパルス発生器(8a)を経て二進化十進計数器(9a)に接続されている、との構成を有し、右マイクロスイツチ(MS)の作動桿(MS´)は、バネによりその先端が表示幕を押しつけるように付勢されており、その先端が表示幕に明けられた窓孔(H)に合うと、右バネの作用により窓孔内に入り込むもので(物件目録第5図(b)参照)、右マイクロスイツチ(MS)は、その作動桿(MS´)の先端が表示幕に接しているときと窓孔中に入り込んだときとの位置を異にすることにより、すなわち、作動桿の位置的変位により電気接点の開閉を行わしめるものであつて、また、それ自体からパルス信号を発生するものでないことが認められる。一方、前掲甲第一号証によれば、本件発明における近接スイツチについては、本件明細書上、通常の技術用語として「近接スイツチ」の語を用いていることが明らかであるから、本件発明における「近接スイツチ」とは、「マイクロスイツチにおけるアクチユエータを近接要素すなわち機械的に接触せずに物体の接近を検出する要素で置き換え、磁束の変化、コイルのインダクタンスの変化、コンデンサの容量変化等を検出して、被検出物体と無接触で動作し、パルス信号を発生するスイツチ」であると認められるから、被告装置における「マイクロスイツチ(MS)とパルス発生器(8a)」は、本件発明の構成要件(A)の「近接スイツチ」に、被告装置における「窓孔(H)」は同じく「位置検出素子」にいずれも該当せず、被告装置は本件発明の構成要件(A)を充足しない。

(二) 前掲甲第一号証によれば、構成要件(B)の「論理制御回路」について本件明細書上、オア回路(論理和回路)、禁止回路(抑止回路)、否定回路を用いた論理回路によつて制御を行う構成のみが記載されており、右以外の構成の回路については何らの開示も示唆もされていないことが認められる。そして、一般に論理回路とは、論理和回路、論理楕回路、否定回路、抑止回路等の論理演算を行う回路を用いて論理関数を構成する回路を意味することは明らかであるから、本件発明の構成要件(B)の「論理制御回路」とは、この意味における論理回路を用いて制御を行う電気回路であると認められる。

原告は、被告装置の比較器(7a)は二値論理的に機能しており、右構成要件(B)の論理制御回路に当たる旨主張するが、別紙物件目録の記載によれば、被告装置の比較器(7a)は、二進化十進計数器(9a)からの計数信号をダイオードマトリツクス(9´)で十進数に変換した上この計数値をデジタルスイツチ(5)の整定値と量的に比較し、両者が一致しないときは、駆動用モータ(4)の正転、逆転を行わせる出力をその優先回路(8b)から発生させるものであつて、前記のような論理演算を行う回路を用いて論理関数を構成する回路ではないことが明らかであるから、被告装置には前記の論理回路は存在しないことが認められ、右によれば、被告装置の比較器(7a)は右構成要件(B)の論理制御回路には該当しない。

また、右から明らかなように、被告装置の比較器(7a)からは駆動用モータ(4)の正転、逆転を行わせる出力が発生するのみで、本件発明の論理制御回路のように同モータを停止させる停止信号を発生しない。

以上のとおり、被告装置は本件発明の構成要件(B)を充足しない。

(三) 別紙物件目録の記載によれば、被告装置は、デジタルスイツチ(5)で任意に整定した数値と、二進化十進計数器(9a)からの計数信号をダイオードマトリツクス(9´)で十進数に変換した計数値とが一致すると、比較器(7a)に連なる優先回路(8b)から発する正転、逆転の出力が消えて駆動用モータ(4)は停止し、かつ、装置の電源の開放は手動で行うものであることが認められ、右によれば、被告装置は本件発明の構成要件(D)の「前記論理制御回路の停止信号によりモータを停止せしめ同時に装置の電源を開放せしめる停止制御回路」を具えないことが明らかであり、右要件を充足しない。

以上のとおり、被告装置は本件発明の構成要件(A)、(B)、(D)のいずれをも充足しないから、本件発明の技術的範囲に属しないことが明らかである。

原告らは、構成要件(A)、(D)に関し、被告装置は本件発明と均等又は単なる設計変更である旨主張するが、本件発明とその具体的構成において右のような顕著なる差異を有する被告装置について、均等、設計変更を認める余地はない。原告らの主張はいずれも採用しない。

よつて、被告装置が本件発明の技術的範囲に属することを前提とする原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これを棄却することとする。

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